公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室

発表データ

2018 夏のセミナー 神経病理ハンズオン

中枢神経系の染色法 − 的確な病理診断のために −

公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室 関 絵里香

KB染色法の技術的ポイント

LFBの分別と染色像

髄鞘は、LFBが髄鞘の構成成分であるリン脂質・リポ蛋白と結合することで淡いグリーンに染まる。この染色は過剰な色素で強く染色した後に適度な色合いになるまで色素を除去、つまり分別をする必要がある。分別は0.05%炭酸リチウムと70%エタノールで行う。

LFBの分別は皮質の色が白くなるまで行う。しかし、過度に分別を行うと必要以上に色が落ちてしまう。色を落としすぎて肝心の病理構造物が無くならないように気をつける。

例えば、筋萎縮性側索硬化症・脊髄側索の髄鞘脱落病変をLFB染色すると、破壊された髄鞘やそれを貪食するマクロファージを検出できる。しかし、過度に分別すると、これらの構造物は色が薄くなって検出できなくなってしまう。また、分別が不足すると共染が強くなり髄鞘やマクロファージを検出することが困難となる。

クレシルバイオレット染色液のpH値と染色像

LFBによって髄鞘染色したあと、クレシルバイオレットによって核とニッスル小体を染色する。そして、KB染色の染色像はクレシルバイオレット染色液のpH値に 左右される。つまり、最適なpH値の染色液で染色した場合は良い染色像が得られる。しかし、pH値が適切ではない場合は共染が強い、もしくは非常に色合いが薄 い染色結果となる。

染色液のpH値が染色像を左右する理由は、クレシルバイオレットの色素と組織成分がイオン結合するためである。クレシルバイオレットは正に荷電するため、組織の中で負に荷電している組織成分とイオン結合し青く染める。つまり、核やニッスル小体の成分が負に荷電するように染色液のpH値を整えると、クレシルバイオレットと結合して青く染まる。その結果、適切な染色像を得ることができる。

染色に用いる溶液のpH値によって、どの組織成分がクレシルバイオレットと結合するのか表に示した。ヘマトキシリンと同様に染色液や分別液を適度なpH値に整えることで、核やニッスル小体に含まれるリン酸基が負に荷電し選択的に染色される。

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