発表データ
第58回日本神経病理学会総会学術研究会・神経標本技術フォーラム
ヒト凍結切片の髄鞘染色における非特異的反応の回避方法
東京都医学総合研究所・神経病理解析室 関絵里香
対策① KB染色における条件検討
KB染色の条件検討
- ①脱脂
- エタノール、酢酸アルコール、キシレン、エタノール・クロロホルム、メタノール・クロロホルムなど使用
- ②染色液
- 染色液の濃度、反応温度、反応時間
- ③分別
- 分別液の濃度、時間など
脱脂・染色液・分別で非特異的反応は抑えることはできない
-20℃、不凍液中で保管された予備用切片
KB染色における凍結切片の保存状態の影響
- 切片張付け後に室温保管された場合:非特異的反応が目立つ
- 貼付け直後に染色もしくは切片貼付け後に冷蔵保管された場合:→非特異的反応は比較的少ない
対策② KB染色以外の髄鞘染色の採用
KB染色以外の髄鞘染色
- ソロクローム・サイアニンR染色
- 鉄ミョウバンで媒染しソロクローム・サイアニンR水溶液で染めた後、水酸化アンモニウム水溶液で分別すると髄鞘は青色に染まる。分別液を1%酢酸アルコールにすると髄鞘は染まらず細胞核が青色に染まる。
- ウェルケ染色
- 鉄ミョウバンで媒染しリチウム・ヘマトキシリン液で染めた後、蒸留水で洗う。髄鞘を紺色に染める。
ソロクローム・サイアニンR染色とは
- 分別液が酸性では細胞核、細胞形質が染まる
- 分別液が塩基性では髄鞘が染まる
ソロクローム・サイアニンR染色+ニッスル染色
- 非特異的反応は目立たない
- ニッスル染色の分別に酸を添加した分別液を使用すると髄鞘の染まりが薄くなるので飽和KBr添加95%エタノールで分別する
ソロクローム・サイアニンR染色の分別の程度
ウェルケ染色とは
- 媒染剤と色素液を分離して使用する独特なヘマトキシリン染色法
- 切片を鉄明礬液によって媒染しヘマトキシリン液にうつすことによって鉄ヘマテイン・レーキが作成される
ウェルケ染色+ニッスル染色
- 非特異的反応は目立たない
- 髄鞘が1本1本明瞭に染まる
ソロクローム・サイアニンR染色 versus ウェルケ染色
- ソロクローム・サイアニンR染色と比較してウェルケ染色は髄鞘1本1本が明瞭に染まる
各染色の特徴
KB染色
- 切片の保管の仕方次第で非特異的反応を最小限に抑えることができるが完全に抑えることができない。
ソロクローム・サイアニンR染色
- KB染色で非特異的反応が目立つ切片でも、非特異的反応は目立たない。
ウェルケ染色 凍結切片にオススメ!
- KB染色で非特異的反応が目立つ切片でも、非特異的反応は目立たない。
- 髄鞘1本1本を明瞭に染めることができる。
凍結切片の取扱い
- スライドグラスに貼付けず切片を浮遊のまま冷蔵もしくは冷凍保管する
- スライドグラスに貼付け風乾後にすぐ染色する
- スライドグラスに貼付けた後すぐ染色できない場合は、密封し冷蔵もしくは冷凍保管する
- 冷蔵・冷凍した切片は染色前によく乾かす
- 非特異的反応が目立たない染色であっても脱脂をする。染まりのムラが軽減し、また染色像がよりシャープになる