公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室

発表データ

第13回神経病理コアカリキュラム教育セミナー

中枢神経系の染色法
− ヘマトキシリン・エオジン染色法と5つの特殊染色法 −

東京都医学総合研究所・神経病理解析室 関絵里香

はじめに

中枢神経系の構造は1種類の染色だけですべてを把握することは難しい。
そこで、中枢神経系の構造は複数の染色法から得られる情報を統合して把握する。

同一切片を3つの異なる染色法で染めている。

中枢神経系の主な染色法

一般染色:組織の成り立ちを概観する

ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色
細胞核と細胞形質を違った2種類の色調に染め分ける

特殊染色:ある特定の組織成分のみ選択的に染める

クリューバー・バレラ(KB)染色
ニッスル小体と髄鞘を染める
ボディアン染色
神経線維および異常線維成分を染める
ガリアス・ブラーク(GB)染色
リン酸化タウの蓄積と多系統萎縮症のグリア細胞質内封入体を染める
ホルツァー染色
アストロサイトの突起およびグリオーシスのグリア線維成分を染める
免疫染色
抗体を用いて切片上の特定の抗原のみを染める

ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色法

HE染色で見る中枢神経系の構造

HE染色で見る病理構造

好塩基性と好酸性にわけることができる

ヘマトキシリン染色液の状態と染色結果

クリューバー・バレラ(KB)染色法

KB染色で見る中枢神経系の構造

重染色することによって得られる髄鞘の色

髄鞘は切断面によって色合いが微妙に異なって見える

KB染色で見る病理構造

LFBの分別

筋萎縮性側索硬化症・脊髄側索の髄鞘脱落病変

溶液のpH値とクレシルバイオレット

染色液や分別液など染色に用いる溶液のpH値によって染色結果は変化する

ボディアン染色法

ボディアン染色で見る中枢神経系の構造

神経線維の大径および小径線維、細胞核、神経細胞の細胞体、線維成分の凝集体(神経原線維変化など) を赤茶色に染める

ボディアン染色で見る病理構造

プロテイン銀の質と染色性

染色結果はプロテイン銀の質に依存
メーカーやロットによって鍍銀像の発現が弱いものもある

ガリアス・ブラーク(GB)染色法

GB染色の基礎

※リン酸化タウの蓄積であるピック球、またリン酸化αシヌクレインの蓄積であるレビー小体は極淡くしか染まらない

GB染色で見る病理構造

GB染色の還元反応

ホルツァー染色法

ホルツァー染色の基礎

アストロサイトの突起とグリオーシスのグリア線維成分をクリスタルバイオレットで青紫色に染色

KB染色で染色性が低下している部分にグリオーシスが形成されることがある

※HE染色やKB染色である程度グリオーシスの局在の見当をつける

「ホルツァー染色は良く晴れた日にやるもの」

※析出物が残ると数日後に脱色してしまう

ホルツァー染色の代替染色法

ホルツァー染色の短所
ホルツァー染色は人体に有毒な試薬(アニリン、クロロホルムなど)を使用
代替染色法
・リンタングステン酸ヘマトキシリン染色(PTAH)
・抗GFAP抗体による免疫染色

免疫組織化学法(免疫染色)

免疫染色の基礎

抗体との抗原抗体反応を利用して抗原の局在を可視化する
・酵素抗体法、蛍光抗体法など
染色する切片を調整してから免疫染色を行う
切片の調整
・抗原賦活化:抗体が抗原に結合しやすくする(加熱、酵素消化など)
・非特異的結合のブロック:抗体の非特異的反応を低下させる
(二次抗体の動物種と同種の正常血清、スキムミルク、BSAなど)
・自家蛍光の軽減
免疫染色
・抗体反応 (一次抗体反応、標識二次抗体反応など)
・対比染色(核染色)

神経変性疾患で形成される異常蛋白の凝集物の検出

抗ユビキチン抗体を活用した異常蛋白質の検出

抗ユビキチン抗体で検出できる異常蛋白質

ユビキチン化標的蛋白
変性疾患で形成される多くの異常蛋白は、ユビキチン・プロテアソーム系によって分解除去されるためにユビキチン化される。つまり、多くの異常蛋白は抗ユビキチン抗体陽性となる

抗ユビキチン抗体による異常蛋白質のスクリーニング

固定(ホルムアルデヒド)の影響

蛍光染色における自家蛍光への対処

おわりに

良い染色結果を得るためには…

標本作成のプロセスすべてが適切に行われることが必要

染色に影響を与える染色以前の行程

etc.

診断に適した標本作成方法の公開

http://pathologycenter.jp/method/method.html

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