公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室

発表データ

第57回日本神経病理学会総会学術研究会

神経病理における標本作成技術の共有
− ウェブサイトを活用した取り組み −

関絵里香1,2 小島利香1,2 江口弘美1,2 新井麻友美1 羽賀千恵1
植木信子1,2 八木朋子1,2新井信隆1,2

1東京都医学総合研究所・神経病理解析室
2都医学研・脳神経病理データベース委員会

目的

的確な診断を導く標本を作成する技術を学ぶことは技術者にとって必須と言える。一方、神経病理解析室には、長年培われてきた神経病理の分野における診断に適した標本作成のノウハウがある。そこで我々は技術や知識を体系化し公開することによって、標本作成技術を学習できるしくみを整備することにした。

方法

神経病理解析室ホームページ・脳神経病理データベースを活用し以下2通りの学習環境を提供した。

  1. 情報発信:http://pathologycenter.jp/method/he.html
    標本作成技術を紹介するテクニカルコンテンツを整備し、神経病理解析室のノウハウを各自が学習できるようにする
  2. 双方向の情報共有:
    技術者専用グループルームを整備・運用し、疑問や意見を他の技術者と共有することで学習効果を高める

結果1・情報発信:脳神経病理データベース・テクニカルコンテンツの整備

テクニカルコンテンツからノウハウを発信

左:脳神経病理データベース、トップページ。ここからテクニカルコンテンツに入る(赤矢印)
右:テクニカルコンテンツ、染色法のページ。赤矢印は染色法のメニュー。HE ・Nissl・LFB・KB・Bodian・Holmes 改変Holmes・Gallyas Braak(GB)・Holzerなど

標本作成の知識・技術を体系化して公開(定量化できるかできないか?)

定量化・形式化できる知識・技術

決まった手順に従う知識・手技を定量化または形式化し、文書や図表を用いて整理した。
左:GB染色の染色手順
右:GB染色の試薬。作り置きできる試薬を紹介。

定量化・形式化できない技術の解説

技師のさじ加減で決まるような文書化、図式化が難しい技術を、イラスト・画像・動画を用いて解説した。
左:ホルツァー・染色液をかける手技(画像)
中:GB・還元反応を止めるタイミング(画像)
右:LFB分別手技(動画)

定量化・形式化できない知識の解説(病変を的確に検出する標本作成のポイントを写真で解説)

左:LFBの分別:筋萎縮側索硬化症、脊髄側索。分別を止めるタイミング次第で染色結果は大きく左右され、診断結果に影響を与えるが、分別は定量化・形式化できない。上は過度な分別、下は適度な分別。

右:GBの還元反応:アルツハイマー型認知症、海馬。還元反応を止めるタイミングは定量化・形式化できない。左列から還元8分、15分、20分。この症例では還元8分では十分なシグナルを検出できない。

結果2・双方向の情報共有:技術者専用グループルームの整備

技術者同士の情報共有の場

[STEP1]管理者が日誌を投稿
管理者が題材を決めて日誌という形で話題を提供する。
写真、動画の投稿が可能。また、リンクを張ることができる。
[STEP2]フォーラム参加者にメールで通知
日誌が投稿されるとメールで通知される。
[STEP3]フォーラム参加者がコメントを投稿
日誌に対するコメントという形で意見や質問などを投稿する。
[STEP4]フォーラム参加者にメールで通知
日誌に対するコメントが投稿されるとメールで通知される。

左:神経病理技術フォーラムトップページ、右:写真の投稿とコメント

考察

ウェブサイトの活用により情報発信はできるようになったが、技術者専用グループルームは教室内での試験的な運用に留まっている。学習環境をより充実させるためにはグループルームの運用を本格化させる必要がある。しかし、グループルーム参加者をどのように募るのか、取り扱うテーマはどのようなものが適当か等、検討すべき課題は多い。そこで第58回日本神経病理学会学術研究会をめどに技術者が実際に集うフォーラムを企画し、課題検討に取り組みたい。

Kursus

神経病理クルズス

ガイドライン

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