公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室

発表データ

2018 夏のセミナー 神経病理ハンズオン

中枢神経系の染色法 − 的確な病理診断のために −

公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室 関 絵里香

固定の影響

染色に至るまでに解剖、固定、脳の切り出し、脱水・脱脂、パラフィン包埋、パラフィンブロック作成、薄切など複数の行程がある。どの行程も染色結果に与える影響は大きい。しかし、この中で固定が染色結果に与える影響は特に大きいと言える。

剖検脳の固定

研究所に持ち込まれるヒト剖検脳は、固定にホルムアルデヒドを使用しているケースがほとんどである。また、固定方法は脳を丸ごと固定剤に漬け込む浸漬固定法が多い。

浸漬固定の問題点

浸漬固定法では固定液が組織内部に到達するのに時間がかかる。従って、組織が全脳のように大きなものである場合、組織中心部は固定される前に自己融解する可能性がある。

また、表面は固定がしっかりされ内部は固定が不十分という固定のムラができる。写真a, bに固定ムラの様子を示す。赤枠で囲んだ部分は周囲と比較してピンク色に、赤枠の外側は黄色くなっている。ピンク色の部分は固定が不十分で黄色の部分は過固定であることを示している。

このような固定ムラは染色ムラにつながる。一方、脊髄のように大脳と比較して組織が細長い場合、短期間で均一に固定される。写真cの脊髄断面を見ると色合いは均一である。この場合は色ムラのない均一な染色像が得られる。

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