公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室

発表データ

2018 夏のセミナー 神経病理ハンズオン

デジタルパソロジー概要と脳神経病理DBの活動について

公益財団法人東京都医学総合研究所 神経病理解析室 小島 利香

デジタルパソロジー

デジタルパソロジーとは?

肉眼レベル、顕微鏡レベルを問わず、病理画像を一旦デジタル情報として電子化し、モニター上に再現表示させたデジタル画像を用いて、病理診断、教育、研究等、病理の諸活動を行うことをいう。

(病理診断のためのデジタルパソロジーシステム技術基準 第2版)

全部デジタルパソロジー

上記の定義に基づくと、デジタルパソロジーとはデジカメ付顕微鏡からバーチャルスライド 機器まで幅広く含まれる。しかし最近では、デジタルパソロジー=バーチャルスライドとなりつつある

バーチャルスライドとは?

バーチャルスライドとは、病理組織標本を高精度で大容量のデジタルデータに変換した画像データのことで、Whole Slide Image(WSI)とも言う。

標本を専用のスキャナーで取り込むと、機械に内蔵されている高倍率の対物レンズで標本を細かく撮影していき、高解像の画像データが作成される。この画像はモニター上で拡大・縮小することができて顕微鏡のように細部まで観察することが可能である。

WSIの利点・問題点

厚生労働省「がん診療連携拠点病院に対する遠隔画像診断支援事業」による取り組み

WSIを利用した遠隔病理診断により病理医が不足した地域や病院などでも適切な病理診断を下すことができ、医療の地域間格差を是正することが可能となる。

平成18年から厚生労働省では「がん診療連携拠点病院に対する遠隔画像診断支援事業」という取り組みを行なっている。

東京都の遠隔医療設備整備事業による取り組み

東京都でも平成14年度から遠隔医療設備整備事業により補助を行っている。

医療機器としてのWSI

WSI機器が医療機器として承認されたのはつい最近である。

日本では2017年にフィリップスのバーチャルスライドスキャナが国内初の病理ホールスライド画像診断補助装置として薬事承認を取得した。

また、2018年度の診療報酬改定によりデジタル病理画像のみでの病理診断でも病理診断料が算定可能となった。

2014年EUにおいて体外診断用医療機器としてCEマークを取得
2017年米国FDAにおいて臨床診断向け医療機器として認可
2017年日本でも病理診断補助装置として薬事承認を取得
2018年診療報酬改定
デジタル病理画像のみを用いた病理診断を行なった場合も病理診断料が算定可能に

オランダでは全病理診断業務をデジタル化しているラボもあります

日本よりも一足早く承認されたヨーロッパでは病理診断のデジタル化が進み、全病理診断をデジタル化したラボも登場した。

オランダ最大の病理検査ラボのLabPONでは全ての症例がデジタル画像で診断されている。

AIによる画像診断支援

デジタル化が進むに従って、AIの診断支援ソフトの開発も進んでいる。

例としてNECが提供している病理画像解析システムe-pathologistのサンプル画像を示す。画像データから特徴を分析して異常部分を抽出してくれる。

このような画像解析技術は活発に研究が進められており、今後はより効率的な画像診断が可能になると予想される。

WSIシステムの構成要素

WSIを作製するためのWSIシステムの構成要素を示す。

画像を取り込むための画像入力装置、取り込んだ画像を保存する画像保存装置、保存された画像をモニタ画面に表示する画像表示装置から構成される。

バーチャルスライド機器の主なベンダー

バーチャルスライド 機器を扱うメーカーは様々あり、価格も性能によってかなりの差が出てくる。最新のものでは一度にスキャンできる枚数も多く、スキャン時間も早い。

神経病理解析室ではアペリオというメーカーのものを使用しているが、現在はライカに買収されており、ライカからアペリオの後継機が出ている。

画像取込に影響する標本作製上の留意点

WSIのためには良質な組織標本の作成が重要!

病理診断が目的の場合には40倍の対物レンズによる画像取込が推奨される

画像取込時に悪影響を及ぼす要因

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ガイドライン

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