マーモセットは新世界ザルの一種で、成熟個体でも体長約20cm〜30cm、体重約300g程度の小型の霊長類である。原産地はブラジルで、森林に広く分布し樹上生活を送る。植物の樹脂や樹液、果実、昆虫などを食べる。
扱いが容易な点や、繁殖力の高さから昨今実験動物として注目されている。
現在、実験動物として広く使用されているトランスジェニックマウスは医学分野で大きく期待される一方、マウスとヒトでは遺伝子やその機能に大きな違いがみられる場合もあり、よりヒトに近い霊長類での研究も必要であると考えられるようになってきた。 霊長類の実験動物にはいくつかの種類があるが、なかでもマーモセットは他の実験用サル類に比べて性成熟が約1年半と短く、1回に2〜3匹の子供を産み、周年繁殖で1年間に2回出産することが可能である。霊長類でありながら、マウスのように高い繁殖力を持つため、実験動物としての高い有用性をもっている。
2009年には世界で初めてトランスジェニックマーモセットの作製と継代が報告され、ヒト疾患モデル動物の開発・研究を大きく進展させた。その結果、近年、神経科学や再生医療を中心にバイオメディカル研究でのマーモセットの使用が急増している。マーモセットの脳は大脳皮質の拡大で生じた霊長類に特異的な機能を持ち、代謝経路、生理学的・解剖学的特徴がヒトと非常に類似している。また、家族単位で行動して利他行動をするなど社会性に富み、高い社会認知能力をもつ。このことから、認知科学などの高次脳機能の研究や、ヒト神経疾患研究、特にパーキンソン病、脊髄損傷、多発性硬化症などの神経変性疾患をはじめとした様々な疾患の発症メカニズム、病態解明に貢献すると期待されている。